雑貨店の店名をChatGPTと考えてみた
この原稿は昨年2023年5月に執筆。最新のChatGPTはこちら
お店で使える?
最近大きな話題の会話型AI、OpenAI社のChatGPT(チャットGPT)。本稿では、雑貨販売の小規模店の責任者、店長らが店舗の計画や実務で活用できそうな場面を考えたい。AIの専門家でない素人の筆者だが試していると、雑貨店をはじめ各小売店の業務の役に立つ点を実感する。小売の現場では、消費者向けサービスへの活用を語られがちだが、店舗内業務に活かせる場面も多そうだ。
誰でも簡単?
世の中には素晴らしいソフトやシステムが数多あるが、効率化が目的であるにもかかわらず、使いこなすための「勉強」や「手間」に多くの時間を割くようでは本末転倒だ。
一方ChatGPTを使うこと自体は難しくない。(人間の)スタッフに口頭やメモで的確に指示する事ができる人であれば、すぐにそれなりに使いこなせそうだ。これが最大のメリット。使用するためのアカウント登録も簡単。GPT-3.5バージョンは無料。登録手続に関してはネット上に多数解説があるので参照されたい。
Microsoftの「Bing」、LINEの「おしえて!ChatGPT」等、さらに手軽に使えて信頼度の高い企業の他サービスでもその機能を体感することができる。
企画で役立つ?
ブレスト(brainstorming)やアイディア出しの相棒として。誰かがChatGPTとのやりとりを壁打ちと例えていたが全くその通り。
例えばネーミング。新しい店名を考案する際はもちろん、新設の売場名、イベント催事のネーミングに多くの人が苦労するが、それは元となる叩き台(材料)があまりないことが理由の一つ。ChatGPTでは、ある程度の条件を指示すればそれなりの候補案が多数出てくる(玉石混淆であるが)。
ただし、質問の設定に前提条件、命令文(プロンプト)を詳しく付け加えること。
「女性向けの雑貨店の名前を考えて」だけのシンプルな命令よりも「あなたはネーミングの専門家です。店名を5個考えてください。店は仙台市青葉区で開店予定。北欧テイストのキッチン雑貨を販売する店。客層は女性、40歳前後、主婦の方を想定。英語、日本語どちらも問わないが、10文字以内。語感がやさしいもの。各ネーミングの理由も30文字以内で教えて」等と条件や概要を伝える事。
この質問に対してChatGPT の回答は
こちらの要望にお応えして、店名を5つ考えさせていただきました。
Mellow Kitchen – 「メロウ」は柔らかい、穏やかなという意味であり、お客様がリラックスしてキッチンを楽しめるような空間を提供したいという思いが込められています。
Cozy Table – 「居心地の良い」という意味の「コージー」と、「テーブル」というキッチンとダイニングの中心となる場所を組み合わせた店名です。お客様にとって、この店が居心地の良い場所であることを目指しています。
Petite Nordic – 「プチ」というフランス語で小さいという意味を持ち、北欧テイストの雑貨をコンパクトに揃えることを表しています。また、女性らしさや可愛らしさをイメージして、フランス語を使用しています。(以下省略)ChatGPTの回答原文
どうだろうか。わずか数秒でこのレベルの提案が出てくる(内容、出力時間は環境やタイミングによって異なる)。
さらに指示をすれば10案でも100案でも可能であり、「日本語のみ」と指示すれば、日本語を使った店名案が出てくる。「5文字以内で」「他店舗と類似した店名を避けて」等の細かな指示に何度でも応えてくれる。イマイチの答えに対しては改善を命じる「壁打ち」を繰り返すことで精度が上がってくる。

今後さまざまな場面で手伝ってくれる相棒が生成AI/生成AI「Adobe Firefly」にて作成したイラストに加筆
とっかかりやヒントに
回答案をそのまま使用するのは難しいが、検討するためのとっかかりやヒントとしては十分だろう。ネーミングにとどまらず、新規店舗の企画案、催事のテーマ案、品揃えの方向性やオリジナル商品の開発案等、企画発案の多くの業務でChatGPTとの壁打ちは有効だ。
作文の相棒・文章の添削
「お客様、取引先への文書」、「求人広告」メディア向けの「プレスリリース」等かなりの種類の文書もお手のものだ。前提条件や概要、具体的な指示を与えるとリアルな例文(ひな形)が返ってくる。
また逆に文章の校正、文法チェックとして、自作文を入力し、添削させることも可能。他者に向けての計画書等の文言、自店のホームページでの文章、POPやネット販売時の商品のおすすめコメント等々、ネット、リアル販売問わず店舗で使用する文章を作成の機会は多いはずだ。
注意点
ChatGPTを擬人化してみると一見「親切丁寧でアイディア豊富、優秀」な人という印象だが、「間違っていてももっともらしく言う」「おしゃべり」「博識だけど実地体験がない頭でっかちな人」のイメージもあり、油断できない部分も多い。出力内容に誤りや不確かな部分が散見されるので事実確認が必要。間違った内容であっても、きちんと(見える)文章で本当らしく回答があるので要注意だ。
あくまで、ヒント、参考、たたき台レベルにとどめつつ、利用できる点を積極的に取り入れたい。
またChatGPTは過去の公開情報を元に最大公約数的(一般的)な提案をしてくるので、これまでになかった斬新な案、個性的な案はChatGPTからは出てこない。専門度の高い知識や公開されていないであろう稀少なノウハウを踏まえた提案もChatGPTからは出てこないはず。
よって決定前には必ず個別の事情を踏まえること、そして自身のアイディアや専門家の知見を活かすこと=人間の思いを大切にするべきである。
こちらの情報を学習されたくない
入力する内容は、各個人情報、企業秘密等の、AI(ChatGPT)に学習(公開)されたくないものは必ず避けること。先日、学習されないようにする学習オフ設定が機能として新たに追加されたので、ぜひ設定しておきたい(Setting>Chat History & Trainingのタブ)。
世の中の公開された情報の蓄積が回答となるが、現在は2021年までの情報しか学習していないとのことなので、最新の情報に関しても自力で調査確認が必要だ。
えっ?この原稿はChatGPTを使っているのかって(笑)。執筆には全く使っていないけれど、最終段階で添削してもらいました!
了–以上 2023年5月執筆
web掲載にあたっての付記:本日2024年7月15日時点でのchatGPT利用でのキャッチフレーズ作成例
富本雅人 とみもと・まさと 94年から雑貨ビジネスコンサルティング&プロデュースを行う。講座「雑貨の学校(R)」主宰講師。著作『雑貨の教科書』シリーズ(SBクリエイティブ刊)、『雑貨力』(ビジネスガイド社刊)ほか。「雑貨の学校(R)」とは、雑貨コンサルタントの富本雅人が主宰する99年スタートの雑貨店、ライフスタイル店など雑貨を販売する店舗の創業、経営のためのスキルアップ講座。これまで多数の店舗オーナー、スタッフを育成している。https://zakka.org/school
2023年5月16日「繊研新聞」studyroom掲載文に加筆修正のうえ掲載 2024年7月15日
もっと雑貨、雑貨屋さん業務を知りたい方は著者の本をご購読ください。
