雑貨屋さんとは。雑貨業界は曖昧だから面白い?!
「画鋲から自転車まで」雑貨屋さんの定義
雑貨とは、雑貨屋さん雑貨ショップとは、雑貨業界とは
画鋲から自転車まで、雑貨屋さん雑貨ショップと自他称される小売店には、あきれるほどに様々な分野の商品が扱われている。誰もが、はじめてその品目の広さを聞くと唐突な印象を持ってしまうものだが、実際にその店頭を見ると思いの外、しっくりとおさまっていてほとんど気にならないことに気づくだろう。
テイスト、スタイルの統一や、使う場面を想定したVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の工夫など、店頭での工夫も気にならない理由だ。加えて扱う商品の特徴に共通点がある。本稿では、雑貨屋さん雑貨ショップ及びその取扱商品の共通点(定義)を考えてみたい。
雑貨とは「雑多の貨物。また、こまごまとした日用品」広辞苑
昔ながらの雑貨屋、雑貨荒物店やコンビニ、スーパー、ホームセンターの日用雑貨売場の取扱商品、行政などの「雑貨工業品」としての雑貨の分類はこの定義で充分だろう。
しかし、アフタヌーンティー、プラザ、ロフト……などの雑貨ショップの商品(本章では仮に雑貨とする)の説明としては、物足りないのが実感だ。
それは「雑多な貨物」と言い捨てられない趣味性の高い商品、流行や時代の色を濃く反映した商品、「日用」使いできないコレクション商品、こだわりの商品などが売られていることが理由。
そして、家具、家電など決して「こまごま」とは言えないようなサイズの商品までも雑貨屋さん雑貨ショップでは品揃えされていることも大きな理由だろう。
雑貨業界とは
雑貨商品、雑貨を企画、製造、販売する各企業全てが「雑貨業界」を構成するプレイヤー。分野としては、本籍(もともとの業種)がファッション、インテリア、書店、食品など様々な分野から雑貨店市場に向けての参入が多いが、雑貨店、雑貨を販売する小売店(EC含む)を舞台に勝負(ビジネス)する企業群のこと。
本稿でも解説しているが、「雑貨」「雑貨屋」の定義は難しい。特に行政なとで定義分類されている訳ではない。
強いて上げると「インターナショナル・ギフト・ショー」など雑貨をテーマとした見本市に出展している企業。また同ショーに来場して商品開拓、買い付けを行う店舗などの小売業全てが業界の範疇と解釈できるだろう。
雑貨業界の市場規模などの考え方は拙著「雑貨力」の
第3章「雑貨・ギフト業界の歩き方」/雑貨売り場の市場規模 The 雑貨店データ1/中小雑貨店の経営指標!? The 雑貨店データ2に詳しいのでよろしければご購読ください。
雑貨は高付加価値(情報)商品
雑貨屋さんの集客力の高さは情報性
ある商品の良し悪しを評価する際には、1.機能(使い勝手、丈夫さ等)2. デザイン(美しさ、可愛らしさ等)3 .価格(買いやすさ、適正さ)の3要素での評価が欠かせない。
雑貨商品には、この3要素に加えて4つめの要素がある。それは、「付加価値=情報性」。
例えば、「ロハス志向の」「北欧の」「限定商品の」「日本初の」「雑貨の雑誌で紹介されていた」「手作りの」「1950年代の」「カフェの業務用で使われている」……など、機能、デザイン、価格面以外でその商品を魅力的にアピール(説明)できる要素のことである。
「(蘊蓄を)語れる」「自慢できる要素」「ストーリー(商品背景)」と言い換えても良いだろう。
どこでも買えたり、誰でもが当たり前に知っている、持っているような「語れる」「自慢できる」要素のない(情報性のないもの)ものは、雑貨として魅力的ではない。
お客様の雑貨屋さん雑貨ショップへの来店理由として「特に目的はない」「おもしろいので」「雑貨を見ていると楽しい」などの声がよく聞かれるのは、雑貨売場での買い物を一種の情報収集、エンターティメントと感じているからだ。
情報性の高い商品を展開している雑貨屋さん雑貨ショップが、集客力が高く、話題になりやすいのは至極当然とも言える。
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雑貨は贅沢品。そして人により解釈が異なる
その単価が低くとも、雑貨は一種の贅沢品。人は雑貨がなくとも雑貨だけで日常生活に不自由はない。
心のゆとりや楽しみ、ちょっと華やかな買い物(雑貨店、ファッション店など)での気分転換ということでは現代の人々にとっては必要不可欠なものであるが。
雑貨の定義が曖昧になってしまう原因は、この付加価値(情報性)のとらえかたが
○人それぞれの感性やライフスタイルによって違ってくる(例えば、10代の女性と30代の男性)
○時代によって違ってくる(例えば、20年前と現在)
○場所によって違ってくる (例えば、北欧ならどこにでもある雑貨が日本では雑貨とか)
○それを扱っている企業(流通、メディアなど)の展開手法によって違ってくるからだ。
雑貨屋さん雑貨ショップはコンセプトショップ
雑貨屋さん雑貨ショップの取扱品目は、一見、脈絡のない構成だ。しかし、そこには様々な思惑(テーマ、コンセプト)が込められている。
最初はオーナーやバイヤーが気分で気ままに仕入れていた小規模な個店でも多店舗化、規模拡大化にあたっては、コンセプトを明確にせざるを得ないものである。
例えば「ヤングミセス対象」×「ヨーロッパのナチュラルスタイル」×「キッチン・ダイニング用品」をテーマにしたショップ。
「ティーン」×「アメリカンポップスタイル」×「学校や通学で使うもの」をキーワードに商品展開しているショップ。「ロハス」「手作り手芸のパーツ、素材、キット、作品」コンセプトのショップ……など。
客観的に理解できるできないは別として、何かしらの新鮮なテーマやコンセプトを掲げての品揃えのはずである。
テーマやコンセプトに合ってさえいればどんな品揃え(こまごまとしていないものも)も許容範囲。
他業種店と比較すると自由奔放な品揃えに見えるだろう。しかし、旧来の業種店の品揃えと比較することや、行政で定められた雑貨工業品のカテゴリーにしばられることはナンセンス。
どんなカテゴリーの店に見えようが、なんと呼ばれようが、経営者がコンセプト、テーマ、ターゲット(お客様)に合って、利益を追求できると判断して品揃えているのだ。
わずか10坪程度の売場に、画鋲と自転車が混在することも、とりわけ不思議なことではないのだ。
雑貨も扱う業態店
最近は、書店、文具店、食器店等の各専門店(業種店)でも、雑貨商品を積極的に取り入れる傾向にある。他にも雑貨も扱う新旧の各業態店が多くあり、それらとの混同も、雑貨ショップの定義を更に難解にしてしまっている。
雑貨も扱う業態店(“みなし”雑貨ショップ)の代表的なものとして、
- ライフスタイルショップ
- ホームファッションショップ
- セレクトショップ
- ギフトショップ
- ファンショーショップ
- バラエティショップ 等が挙げられる。
ライフスタイルショップ、セレクトショップは新しい業態として注目されているが、店頭でライフスタイル提案、独自セレクトでの世界観を表現するためには、食器、キッチン雑貨、バストイレタリー用品はもちろん、ファッション関連、ステイショナリーなどの商品が欠かせない。
ギフト、ファンシー、バラエティショップにいたっては、雑貨ショップとほぼ同義で考えられているのが現状である。しかし、それらの「類型化」した(新しさ、独自性の希薄な)テーマ設定=贈答品(ギフトショップ)、ジュニア対象(ファンシーショップ)、低価格帯中心(バラエティショップ)は、本稿で定義したい雑貨ショップとは、根本的にコンセプトが異なるものである。(後記の図表にも取りあげていない)
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また、客観的に「雑貨ショップ」と解釈されているにもかかわらず、自ら「雑貨ショップ」を標榜(自認)する店は少ない。それは、前述した定義とも関連するが、「雑貨」という言葉の持つ、気軽なイメージが企業価値を損うと考えた結果の場合。既存にない、まったく新しい業態のため、客観的に理解されずに雑貨ショップと解釈されてしまっている場合も多い。
雑貨業界各ショップのポジショニングと有名店リスト
自認、標榜しているかどうかは別として、雑貨ショップとして、客観的に解釈されることが多い有名小売店を中心に取りあげたポジショニング図を作成した (図参照) 。
“みなし”雑貨ショップである、ライフスタイル、セレクト、ホームファッションショップ、各専門店(食品、文具、コスメショップ)なども図中に配置。
当たり前ではあるが、女性をメインターゲットに想定した、ショップが圧倒的に多く、旺盛な消費意欲を持った女性層に支えられた業態であることを再認識されたい。
今回は誌面の都合もあり、性別、年代軸でポジショニングするに留めるが、他にも様々なポジショニングでの研究が望ましいだろう。例として、
・トレンド性・価格帯・マニアックさ・雑貨ショップらしさ・商品政策(SPA型、NB商品中心)他
百聞は一見にしかず。東京の有名商業エリアにある雑貨ショップをリストアップした(表参照)。いずれの雑貨ショップも認知度が高く、業態研究の際に基準となるショップである。
店舗、商品開発、販売手法他様々な面で有用なリサーチ対象であるので、店頭リサーチ(せめてWEBサイト閲覧)を積極的に行いたい。
雑貨ショップのこれから。雑貨業界の動向
雑貨業界トピック1:商品供給企業の直営店と小売店のSPA志向
本来、小売店に商品を供給するのがメイン業務の企業(メーカー、輸入業者、各卸売業)の直営店経営に対する意欲が旺盛だ。自社商品を中心とした在庫のハンドリング力と商品開発力、直売することによる高い粗利益率を大きな武器と考えてのものだ。
たとえ小売りのノウハウに乏しくとも、それを上回るメリットがあると考えている。
一方小売店も、多店舗であればあるほどメリットが大きい、PB商品、海外直接輸入など自社で在庫をコントロールでき、高利益率が期待できる、SPA型MDへの志向が強まっている。
もちろん、在庫リスクに対する危惧、商品開発(輸入)に必要なスキルを持った人材の育成、組織づくりの問題など、超えなければならないハードルは多いが、比較的リスク(少ロット、開発ノウハウがあまり必要のない)の少ない、布帛の縫製商品、食器類(ガラス、陶磁器)、ポストカードなどから徐々に挑戦しているようだ。
雑貨業界トピック2:注目の商品トレンド
数年前からのベトナム雑貨、タイ雑貨をきっかけとした、アジア雑貨ブームは一段落。同じエスニックスタイルカテゴリーからは、中東(モロッコ、トルコなど)を意識した商材が注目されている。バブーシュ(スリッパ)、キリム(織物)等。
ヨーロッパからは、北欧、東欧の生活雑貨。新品だけでなく、コレクション色の強い、アンティーク、ビンテージの食器、玩具などが、人気が高い。
アイテムとしては、手作り商品。素材、道具、パーツ、キットなど。レトロな欧米感覚のものが注目されている。
子供の為のものでありながら、大人が楽しむ用途で購入する商品。アート性の高い絵本や木工玩具なをインテリアオブジェとして飾って楽しむ大人が大変多い。ひとつのコーナーとして展開するショップも目立っている。
雑貨業界トピック3:注目雑貨ショップ
衣食住など生活の全ての場面の商品を複合的に提案するMD(品揃え)を志向する雑貨ショップが多い中、特定アイテム(分野)に特化して、そのバリエーションや奥行きを身上とするショップが目立つ。
手ぬぐい(かまわぬ)、石けん(ラッシュ)、トートバック (ルートートギャラリー)、インテリアグリーン (プランツプランツ)他
一種の新しいタイプの専門店ではあるが、その店舗デザイン、販売手法、プロモーションなどにおいて、雑貨ショップ的なアピールを行っている。
2007年12月「販売革新」掲載文に加筆修正
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