使われた痕跡が美しい
アンティークではなくジャンク
生活雑貨、趣味雑貨を扱う雑貨、ライフスタイル店ではシャビーテイストのジャンク(感覚の)雑貨が注目されている。
ファッションの世界同様に様々なテイスト・スタイルが入り乱れる雑貨業界。一大ブームとまではいかないが、小さな雑貨店から大型ライフスタイル店まで多くの売場でジャンクな雑貨が目立つ。
センスに自信のあるアート、クリエイティブな志向の大人のお客様に向けての提案が中心だが、若い世代からの反応も増えているそう。
シャビーとアンティークの違い
シャビー(英:shabby)はみすぼらしい。ジャンク(英:junk)はガラクタという意味。最近よく聞くブロカント(仏:Brocante:古道具またはガラクタ市)という言葉もほぼ同義だろう。みすぼらしい、ガラクタと否定的なキーワードであるが、名もない古い生活道具に残された誰かが使った(ような)痕跡、雨風に晒された後の質感を含めて魅力(美しさ)と、とらえているのだ。
錆びたり、塗装がはげたブリキやホーロー製品。日焼けで変色した木製品が人目を引く。さらに多いのが新品にわざと塗装のはげ、色ムラのある状態を施(再現)したり、古材などを使用し中古の雰囲気を加えたもの。
高価なアンティーク(原則100年以上前のもの)やビンテージ商品、リプロダクト商品を上手に買う為には、買手側のお客様にある程度の知識が必要になってくるが、比較的値段の安いジャンク商品の購入には堅苦しい「お勉強」は必要がなく気楽に選ぶことができる。
当時は大量生産されていたものでも、年月を経て、希少性を増す(数が減る)ことも魅力。同じものでもその使われ方で表情が異なってくるのがうれしいとお客様は言う。
今の世の中に溢れるピカピカで無機質、薄っぺらなイメージのモダンなデザイン雑貨に食傷気味ということもあるかもしれない。
好きな古いものを大切に、さらに長く使い愛(め)でることやその気持ちを大切にすることは間接的かも知れないが、“ロハス”なライフスタイルや意識につながる。
ストレスフルな毎日の中で、人が使ったあたたかさを感じる痕跡、時間によって変化した独特の風合いを美しさととらえてそれを使う、眺めることを癒しと感じる人も多いのではないだろうか。
ファッション店で扱うなら
ショップのMDの奥行きや広がりを増すため。コンセプトをさらに強くお客様にアピールする演出的な目的のためにと、ファッション(セレクト)店で扱う場合もあるだろうが、注意すべきポイントがある。
まず、その商品の状態(コンディション)を販売時にお客様にしっかりと説明すること。錆びやキズの独特の風合いが良いと思って提案していても、お客様によっては解釈が違う場合があり、そのギャップがトラブルになることが多い。POPや口頭で、商品の状態と商品の価値をしっかり提示しておきたい。
ジャンク商品は、ほとんどが1点もので出会いは「一期一会」。良いと思ったものの仕入れは、即断即決が基本だ。
また同じものの定期的、安定的な仕入、大量仕入はあり得ないということも理解しておきたい。
古物営業法
ご存じの方も多いかも知れないが、国内で中古品(古い雑貨)の仕入販売を行う事業者(店舗、企業)は「古物営業法」により、公安委員会から古物営業許可を受けることが定められている。
古物営業法は盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により、窃盗その他の犯罪を防止するための法律である(申請や問い合わせは最寄りの警察署で)。
どこの国で製造された商品であっても、日本国内で中古商品の仕入販売を行う場合は対象となる。一般客から中古品を買取、下取る。輸入業者、問屋などの国内の卸売業者から仕入れる場合など。
自ら海外から輸入した場合や新品を自分で使っていて、販売する場合などは対象外である。
2009年12月15日 senken新聞「StudyRoom」欄 不定期連載
インターナショナルギフトショー東京会場にて(主催者に許可を得て撮影)
著者
雑貨コンサルタント® 富本雅人(とみもとまさと)
【経歴】大型雑貨店バイヤーなどを経て、雑貨店開業、運営コンサルティング、ビジネスプロデュース他を行う。上場企業から個人店までの幅広いクライアントに対して「雑貨商品」「雑貨売場」を軸にした指導実績多数。各公的団体主催セミナーなどでの講演も行う。講座「雑貨の学校®」主宰。著作「雑貨の教科書」（SBクリエイティブ刊）は版を重ねるロングセラー。雑貨・ギフト・ライフスタイル業界を俯瞰して理解できる近著「雑貨力®」(ビジネスガイド社刊)が好評。HP雑貨コンサルタント
